第104章

「終わったな」陸川時生が言った。

林夕葵は振り返って彼を見る。雨が頬を伝い、冷たく落ちていく。

「終わってない」林夕葵は答えた。「まだ秦野彰がいる」

陸川時生は彼女の肩を抱き、車へと導いた。

「明日、会いに行こう」

車内は暖房が効いていた。陸川時生はタオルで林夕葵の髪を拭く。指先は驚くほど優しい。

林夕葵はシートに身を預け、目を閉じた。

楽になれるはずがない。辰樹は、もう戻らない。

陸川時生が彼女の手を握る。熱い掌。

「帰ったら生姜湯を飲め」エンジンがかかり、ワイパーがフロントガラスの水を掻き取った。

車は崖上を離れていく。地面に残された帆布のバッグと札束は、雨に打たれて...

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