第14章 愛を見せつける

妙だ。本来なら、秦野彰と林遥香――あの畜生みたいな男女を目にしたら、胸が引き裂かれるほど苦しいはずだった。

けれど今、林夕葵の頭の中には何もない。驚くほど、静かだった。

立ち去りもしない。部屋へ戻りもしない。ただその場に、ひっそりと立っている。

果物を運んできた使用人が、階段口を通りかかって林夕葵の姿を見つけ、思わず声を上げた。

「奥様、どうしてこちらに……?」

その気配に、秦野彰が振り向く。林夕葵だと分かるや、眉間に皺が刻まれた。

「……なんで戻ってきた」

「戻っちゃいけないの?」

林夕葵はわずかに顎を上げ、青白い小さな顔をまっすぐ向けた。

「私たち、まだ離婚してない。だ...

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