第29章

雨脚はますます強くなっていった。意識が、じわじわと遠のいていく。

身体のどこかを、見えない何かが少しずつ下へ引いている。深く、もっと深く。光の届かない場所へ。

眠れば、少しは楽になるかもしれない。

目が覚めたら、辰樹に会えるかもしれない。

林夕葵はゆっくりと瞼を閉じた。

そのときだった。雨の帳を突き破るように、切羽詰まった声が、薄れかけた意識へ飛び込んでくる。

「夕葵!」

秦野彰の声じゃない。

これは――

「夕葵! どこだ!」

ばしゃばしゃと水たまりを踏みつける足音。切羽詰まった、速い足取りがこちらへ近づいてくる。

次の瞬間、冷えきった地面から身体がふわりと持ち上がった...

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