第30章

陸川時生はベッド脇に立ち、林夕葵の血の気を失った顔を見つめた。胸の奥に、何か固いものが詰まったみたいに息がしづらい。

手元のスマホに通知が弾ける。秦野彰が林遥香を伴って出入りしている――そんな芸能ゴシップだった。

胸の内が、さらに重くなる。

秦野彰は、ここまで妻を軽んじるのか。

陸川時生は大きく息を吸い、無理やり冷静さを作って窓辺へ移動した。ポケットからスマホを取り出し、通話ボタンを押す。

数回の呼び出しののち、相手が出た。

「先輩、俺です」

声を極限まで低く落とす。

「頼みがある。手を貸してほしい」

「頼みって?」

「健康診断の結果を……偽造してほしい」

陸川時生は一...

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