第47章

別に、何か特別な理由があったわけじゃない。ただ、まともに会話のできる相手と、ほんの少し話したかっただけだ。

陸川時生は、彼女に話すとき一度も遠回しな言い方をしない。責めもしない。八つ当たりの相手にも扱わない。彼女の言葉を一つ残らず「気を引くための芝居」だと決めつけることもない。

けれど、携帯はもうない。番号もはっきり覚えていなかった。

陸川時生の番号は携帯に保存していただけで、わざわざ暗記したことなんてない。今どき誰が電話番号を覚えるだろう。連絡先に入れてしまえば、あとはタップひとつで発信できる。

なのに、今はその一回ができなかった。

林夕葵は暗闇の中で長いこと横になったまま、窓の...

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