第54章 彼は詐欺師を信じたがる

林夕葵は二階の階段の踊り場に立ち、すぐには下りなかった。

リビングはこうこうと明るい。

秦野彰は一人掛けのソファに座り、背筋をぴんと伸ばしていた。向かいには三十代半ばほどの女がいて、切れ味のいいビジネススーツ姿のまま、タブレットをローテーブルの中央へすっと差し出している。

「秦野社長、ご提供いただいた手がかりをもとに、こちらの映像を特定しました」

林夕葵は足音を忍ばせ、階段を下りた。

秦野彰は振り向かない。視線はただ、画面に縫いつけられていた。

映っていたのは、ぼやけた後ろ姿。青いダウンジャケットを着た小さな男の子が、庭先を走り回っている。

映像はひどく揺れていて、画質も粗い。...

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