第67章

あの日から、林夕葵は口を開かなくなった。

食べない。治療にも応じない。誰の顔も見ない。

看護師が流動食を運んできても、唇を固く結び、顔を壁のほうへ背ける。スプーンを口元へ寄せられても、まるで眠っているみたいに微動だにしない。けれど起きていることは、モニターの心拍が全部を物語っていた。

陸川時生が来て、ベッド脇に腰を下ろし、話しかけた。

天気のこと。外のこと。永川医師に「ちゃんと見てろ」と怒鳴られたこと。

林夕葵は、応えない。

一日中、横向きのまま。壁に向けた背中。

秦野彰は病室に張りつき、出ていかなかった。

木村さんに頼み、腕利きの出張料理人を呼んだ。色も香りも完璧な料理が、...

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