第69章

彼は叫びながらも、棚からその輸液バッグをそっと取り外した。動きは極力静かに。接続部をハンカチで包み込み、口元を押さえるようにして持つ。

当直の看護師が駆け込んできて、室内の惨状と林夕葵の真っ青な顔を見た瞬間、固まった。

「採血。電解質、すぐ。これ、検査科へ」陸川時生の早口は矢継ぎ早だった。「警備室にも連絡。さっき看護師を名乗った女が入ってきて、患者の点滴を替えた。側面の出入口から逃走。白いナース服、身長一六五くらい、青いサージカルマスク」

看護師は我に返ると、踵を返して飛び出していった。

陸川時生はベッド脇へ戻り、林夕葵の掛け布団をそっと引き上げた。彼女はまだ震えが止まらず、歯がカチ...

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