第70章

「撮られてない?」

林遥香はスマホを握りしめ、声を限界まで落とした。

受話器の向こうが二秒ほど沈黙し、それから。

「遥香さん、駐車場のあの角度だと……ナンバーは、たぶんはっきり映ってます」

それ以上は聞かなかった。通話を切る。

ソファに沈み込み、足元へ視線を落とす。床に落ちた血はもう乾き、暗い薄膜になっていた。彼女は片足を持ち上げて一瞥しただけで、拭こうともしない。

秦野彰が本気で洗い始めたら、半日もかからず車まで辿り着く。そこから自分に繋がったら、言い逃れはできない。

いま一番厄介なのは陸川時生だ。問題はペンダントじゃない。秦野彰の前で、あの男が持つ重み。陸川時生が隣にいる限...

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