第76章

病室は薄暗く、機器が放つかすかな光だけが浮かんでいた。林遥香はベッドに横たわり、深く眠っている。呼吸は規則正しく、穏やかだ。

林夕葵は枕元まで歩み寄り、すべてを壊した女を見下ろした。

瞳に温度はない。憎しみすらない。あるのは、死んだものを眺めるような虚ろさだけ。

両手で柄を握りしめ、刃を高く掲げる。狙いは胸元――心臓。

そして、ためらいなく振り下ろした。

刃先が肌に届くまで、あとわずか――指一本分もない距離。

闇の中から、力強い大きな手がいきなり伸び、林夕葵の手首をがっちりと掴んだ。

凄まじい力だった。林夕葵の腕は、もう一ミリも下がらない。

陸川時生が影から姿を現す。

田中...

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