第77章

林遥香は床に崩れ落ち、荒く息を吐いた。頬にはまだ涙の跡が残っているのに、瞳だけがすでに冷え切っている。俯いたまま、長い髪が顔を覆い隠した。

秦野彰は疑い始めている。まだ決定的な証拠には辿り着いていないが、方向は合っている。だからこそ――急がなければならない。

506号室。窓の外、枝はすっかり裸だ。

林夕葵はベッドの縁に腰掛けていた。陸川時生はステンレスの洗面器を抱え、熱いタオルをきゅっと絞る。湯気がふわりと立ち上った。彼は夕葵の手首をそっと持ち上げる。昨夜の抵抗でできた痣が、紫紅色に滲んでいた。点滴痕を避け、縁をなぞるように拭う。触れているのが怖いみたいに、動きはひどく優しい。

夕葵...

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