第80章

「最善の薬を使え」

陸川時生の声は掠れていた。

「いくらかかろうが構わない。どんな機器でも動かせ。俺は――彼女を生かしたい」

「最善は尽くします。ただ……林さんは生きようという意志が、ほとんど残っていません」

医師は小さく息を吐いた。

「長期の栄養失調に加え、精神的な消耗が大きすぎる。身体は、もう殻のようなものです。鎮痛剤は最大量まで上げています。現在は深い昏睡状態で、しばらくは目を覚まさないでしょう」

陸川時生はVIP病室の扉を押し開けた。

室内を満たすのは、医療機器の電子音。心電図モニターの波形が、ゆっくりと上下している。

ベッドの上の林夕葵は、呼吸器をつけていた。血の気...

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