第82章

あり得ない。あの口座は三重に暗号化してある。秦野彰のチームですら辿れないのに、精神病院に閉じ込められている林夕葵みたいな狂人が、どうやって突き止めるというのだ。

――だが、もし本当だったら?

もし「永川医師」と名乗るあのクソジジイが、何かを嗅ぎつけていたら?

林遥香は奥歯を噛みしめ、勢いよく書斎の扉を押し開けた。

秦野彰は床まで届く窓の前に立ち、火のついていない煙草を指に挟んでいた。窓の外では、まだ暴雨が叩きつけている。

眉間には深い皺。秦野グループの海外資金プールを総動員して殴りつけた結果、陸川グループの株価は確かに大きく沈んだ。だが、勝った快感はない。

脳裏に焼きついて離れな...

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