第83章

「許して、ですって?」

林夕葵の声は大きくない。けれど、一音一音がやけに澄んでいた。

「秦野彰。あんた、自分が何様だと思ってるの?」

秦野彰の顔色が、すっと沈む。机を叩いて立ち上がり、怒鳴りかけた。

「林夕葵、調子に乗るな。いい加減――」

パァン!

乾いた破裂音が、言葉を真っ二つに断ち切った。

林夕葵は腕を大きく振りかぶり、残っていた全身の力を叩きつけるように――秦野彰の頬を、容赦なく打ち抜いた。

重い一撃。

秦野彰の頭が横へ弾かれ、左頬にくっきりと五本指の赤い跡が浮き上がる。口の端が切れ、血が一筋、滲んだ。

彼はその場で固まった。脳内で「ブン」と鈍い音が鳴る。

三十年...

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