第85章

「――承知した」

秦野秋彦の声は、有無を言わせぬほど断固としていた。

「わしはまだ生きておる。あやつに好き勝手させるわけにはいかん」

通話が切れる。

林夕葵はスマホを置き、机の上の白湯を一口含んだ。

陸川時生が彼女を見つめる。

「……情が移ったか?」

「永川先生は私のせいで捕まった。高血圧なの。薬を切らせたら命に関わる」

林夕葵は画面から目を離さない。

「それに――秦野彰に、全国の前で頭を下げさせる。殺すより、ずっと痛い」

四十八時間後。

秦野彰は破格の保釈金――二千万を二口。支払いを済ませ、警察署の正面玄関を出た。

フラッシュが一斉に焚かれる。長いレンズ、短いレンズ...

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