第86章

秦野彰が、二歩、後ずさる。

林夕葵は乱れた襟元を整え、背筋を伸ばした。

「おじいさまを追い詰めたのは、あなたよ。林遥香を庇うために、秦野家の基盤すら投げ捨てた。くだらない自尊心で、おじいさまを救急に叩き込んだのも――あなた」

「林遥香の名前を出すな!」

秦野彰は彼女を指さし、声を荒らげる。

「5,000万の送金記録はどう説明する! お前は身内を売るクズだ!」

林夕葵の瞳は、波ひとつ立たない。

「林遥香が見せたものを、そのまま信じる。秦野彰、あんたは一生、誰かの鉄砲玉として使われる運命。……跡形もなく血筋ごと途絶えちまえ」

跡形もなく血筋ごと途絶えちまえ。

その一言が、秦野彰...

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