第89章

「それ、辰樹があなたたちに彫って贈った長寿祝いよ」

林夕葵は床を指さした。尿と靴跡で汚れた木片が、じゅうたんの上に散らばっている。

「林遥香が、自分の息子にその上でおしっこさせたの」

林貴晴は木屑をちらりと見て、露骨に眉をひそめた。

「ただのボロ木だろ。いくらの値打ちがある? 安吾が分別ないのは確かだが、だからって遥香の命まで取りにいく気か!」

林夕葵は、怒りが極まって逆に笑ってしまった。

「お姉ちゃん」

秦野彰の脚元に縋るように、林遥香が身を寄せる。見上げた顔は涙で濡れ、いかにも哀れを誘う。

「私のこと、恨んでるのは分かってる。でも今のお姉ちゃんは、もう全部持ってるじゃない...

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