第9章 生きる

「でも、陸川先生。私の息子は……もう死んだんです」

「たったひとりで、あんなに遠いところへ行って……冷たいお墓の下にいる。きっと、怖かった。寂しかった」

「母親として、私は――あの子のそばに行きたいんです」

彼女の中に、もう生きたいという欲望はなかった。

辰樹こそが、林夕葵が息をしていられた唯一の理由だった。けれど今、その支えは折れた。心も、信じてきたものも、まとめて崩れ落ちてしまった。生きて、何になる。

陸川時生は黙っていた。

目の前の女は、骨が浮くほど痩せこけ、紙みたいに白い顔色で、目のくぼみは深い。唇は乾いてひび割れている。

それなのに――骨壺を抱く腕だけは、異様なほどに...

ログインして続きを読む