第91章

彼女は水筒を取り出した。辰樹がいちばん好きだったウルトラマンの水筒だ。袖で丁寧に拭き上げ、墓碑の左側にそっと置く。

次に小さな毛布。辰樹が眠るとき、必ず抱きしめていたもの。きれいに畳み、墓碑の右側へ。

最後に、踏みつけられて破れてしまった画用帳を取り出した。

指先で、紙のしわを少しずつ、少しずつ伸ばしていく。

「辰樹、ママ……あなたのもの、全部持って帰ってきたよ」

林夕葵は写真の中の男の子を見つめ、掠れた声で言った。

風が吹き抜ける。

喉の奥から、激しい痒みがこみ上げた。

林夕葵は口元を押さえる。

咳が、霊園の死んだような静けさを破った。

最初は乾いた咳。けれどすぐ、内臓...

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