第94章

陸川時生は右手を猛然と伸ばし、寸分の狂いもなく秦野彰のオーダースーツの襟元を鷲掴みにした。

筋肉が弾け、腕がぎり、と張り詰める。

ドンッ!

体重七十キロを超える秦野彰の身体が力任せに持ち上げられ、両足が床を離れたまま、廊下のタイル壁へ叩きつけられる。

背中が壁に当たる音が、やけに大きく響いた。

秦野彰が低くうめき、手にしていた書類ファイルが床へ落ちる。ばさっ、と紙が散った。

「秦野社長!」

秦野彰の背後にいたボディガード二人と秘書が、叫びながら駆け寄ろうとする。

「やれ」

陸川時生は振り返りもせず、一言だけ吐き捨てた。

廊下の両側に控えていた警備員八人が一斉に飛びかかる。...

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