第95章

半時間前、彼は片手で秦野彰を壁へ叩きつけた。だが今は、ガーゼを取る指先の力さえ意識して抑えている。

「プロポフォール、2ミリ。押して」

陸川時生は、林夕葵のきつく寄った眉間を見据えたまま指示を飛ばす。

看護師が素早く薬を押す。痙攣はわずかに弱まった。けれど高熱は、いっこうに引かない。

千野医師が数枚の紙を握りしめて入ってくる。手が震え、ペンすらまともに持てない。

「陸川先生……肝腎の数値が、まだ悪化しています。これ、三度目の危篤通知書です。今夜を越えられなければ、薬剤の反跳で脳幹がやられます。脳死に――」

陸川時生が目を上げた。冷え切った視線。

彼は危篤通知書を受け取ると、指を...

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