第97章

病室は、ふたたび静寂に包まれた。

陸川時生は窓際へ歩み寄り、ブラインドを引き上げる。

N市の都心。秦野グループのツインタワーが、陽光を跳ね返して目に刺さるほど眩しい。

秦野彰。

あの男は林夕葵の命を奪うだけでは足りない。最後の一滴まで搾り取るつもりだ。

名前を聞くだけで胸が裂けるのなら――その名ごと、あいつが持つすべてを、N市から消してやる。

陸川時生はスマホを取り出し、ひとつの番号へ発信した。

「陸川若様」

受話器の向こうから、低い男の声が返る。陸川グループ財団の最高経営責任者だ。

医療界では「延命の神様」。そして商界では、陸川グループの絶対権力者――それが陸川時生だった...

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