第10章

 雅人。直樹から欧州での最大の提携プロジェクトを奪う手助けをしてくれた男であり、私の婚約者でもある。

 直樹はストレッチャーから身を起こそうともがいた。胸の包帯はすでに血で赤く染まっている。彼は燃えるような瞳で雅人を睨みつけた。

「彼女を離せ」

 直樹の声は枯れ、その瞳は怒りで燃え上がっていた。

 雅人は軽蔑したように笑った。

「黒木さん、今のあなたに誰かへ命令を下す資格など、もうありませんよ」

「俺は彼女の夫だ!」

「【元】夫です」

 雅人は訂正した。

「それに、まもなく【死んだ】元夫になる。違いますか?」

 直樹はストレッチャーから降りようとしたが、失血のせいで足元が...

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