第5章

 直樹は麗華に目もくれず、車のキーを掴んで病室を飛び出した。

「直樹! まだ血が止まらないのよ、私たちの子供が……」

 麗華の叫びは、無情にもドアが閉まる音にかき消された。

 彼女は下腹部に指を這わせた。そこにあるのは最後の切り札であり、私に成り代わるための唯一の勝機だった。

 だが、今は――。

 電話が鳴った。病院内の協力者からだ。

「麗華さん、黒木夫人の乗った飛行機が墜落しました。黒木様から緊急の連絡が入って、救助ヘリと海上救助隊を総動員しろと……。金に糸目はつけないから、必ず夫人を見つけ出せとの仰せです」

 麗華の爪が、自身の掌に食い込んだ。

「民間の捜索会社にも四社ほ...

ログインして続きを読む