第7章

 直樹がチューリッヒ大学病院の病室に駆け込んだとき、私はすでにもういなかった。

 部屋には、慎重に配置された『残骸』だけが残されていた。

 看護師が直樹に診断書を手渡す。紙を持つ直樹の手は震えていた。重度の心的外傷後ストレス障害、および希死念慮あり。

「患者はどこだ!」

 直樹は看護師の腕を掴んだ。

「お客様、落ち着いてください……! 患者様は昨夜、チェックアウトされました。どうしても出ていくと言って聞かなくて、私たちには止めることができず……」

 直樹はよろめき、壁に背を打ちつけた。

 私が直樹に残したのはシンプルなものだ。完璧に偽装されたカルテと、患者が治療を放棄したという...

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