第103章

個室の空気が、凍りついたみたいだった。

西原司は落ち着いた表情のまま、周防凛の疑うような視線を受け止める。

「そうだ。和解を受け入れてほしい」

書類を握る周防凛の手が、抑えきれずに震えた。

中身は和解契約書。西原司が提示した条件は破格で、財産補償だけで丸々1ページを占めている。

並んだ条項の一つ一つが、鋭い刃になって胸に突き刺さる。心が薄く削がれて、ひりつくように痛んだ。

周防凛は大きく息を吸い込み、こぼれそうな涙を喉の奥に押し戻す。怒りを噛み殺し、低い声で問う。

「西原司……どうして?」

西原司の彫りの深い目元に、後ろめたさが滲んだ。

「黄前瑞幸おばさんが、尿毒症なんだ。...

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