第109章

「バンッ」

離婚協議書を挟んだファイルが、床に叩きつけられた。

「出ていけ」

西原司が、氷みたいに冷たい声で命じる。

その怒気を肌で感じ取り、朝日柏矢と平岡咲人は背筋がひやりとした。反射的に足を速め、執務室から逃げるように出ていく。

廊下に追い出された朝日柏矢は立ち止まり、平岡咲人と顔を見合わせた。

「周防凛が……財産放棄?」

朝日柏矢が信じられないという顔で問う。

平岡咲人は小さく頷く。

「はい」

「あり得ねぇだろ。あの女、金にがめついじゃん。提示が少ねぇから、また小細工してんだろ?」

平岡咲人は真面目に首を振った。

「朝日様、それは誤解かと。周防さんは最初から離婚...

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