第156章

周防凛は一瞬、動きを止めた。西原司の、深くて熱を孕んだ視線とぶつかった途端、胸の奥がどん、と揺れる。

西原司は伏し目がちに息を落とし、低く言った。

「信じろ」

「……分かった」

周防凛はハンドルを握る指に力を込め、そのままアクセルを踏み込む。車は西原家を離れ、夜の道へ滑り出した。

運転しながら、助手席の西原司を横目で窺う。

呼吸は荒くなる一方。額に滲んだ汗が、彫りのはっきりした横顔を伝ってシャツの襟元へ落ちる。手の甲のガーゼは血で赤黒く染まっているのに、本人は気づきもしない。ただ何度もネクタイを引き、息が詰まるみたいに喉を鳴らしていた。

――徳村先生の打った鎮静剤、もう切れてる...

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