第167章

ドアが押し開けられ、入ってきたのは平岡グループの技術スタッフだった。

「平岡様、社長、遠崎グループの東松様がお見えです。いまからライセンスの件で話がしたいと」

平岡貴利は万年筆を握った指をわずかに止めた。ペン先はサイン欄の上、あと1cmもないところで宙に浮いている。彼は入口へ目をやり、すぐ周防凛へ視線を移す。ほんの一瞬、視線がぶつかった。互いの瞳に、信じがたいという色が滲む。

「東松嵐……?」平岡貴利が念のため確認する。

「はい。東松様ご本人です。いま受付でお待ちです」技術スタッフが力強く頷いた。

平岡貴利は万年筆を置いた。動作は静かだったが、机に触れた瞬間、カツンと乾いた小さな音...

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