第28章

周防凛は慌てていたせいで、東山覚のジャケットを着たまま出てきてしまった。

気づいたときには、東山覚の車はすでに地下駐車場の向こうへ消えている。

――人の服を借りた以上、せめて洗ってから返そう。

そう考えた周防凛は、まだ時間に余裕があるのをいいことに、西原グループの社員休憩室へ立ち寄った。備え付けのドライヤーで、濡れてしまった白いシャツを丁寧に乾かす。会議中にみっともない思いをするのは御免だった。

懐かしい場所を歩くと、胸の奥がざわつく。

西原グループで働いたのは、ほぼ六年。情がないはずがない。

西原ビルの廊下を進めば、元同僚とも何人もすれ違った。

向けられる視線はまちまちだ。困...

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