第29章

2時間に及ぶ商談を経て、協業の細部はおおむね固まった。

周防凛は終始、企画書に意識を張りつけたまま、西原司のほうをほとんど見なかった。見たとしても、ほんの一瞬、さらりと視線を流すだけ。

彼女の眼差しは、かつての熱や恋情を失っている。落ち着き払って、冷えていて――まるでただの知人を見るみたいに。

けれど西原司にとっては、知人ですらないのかもしれない。

打ち合わせが終わり、勝ちを確信した西原司が立ち上がりかけた、そのとき。平岡貴利が、ふいに席を立った。

「西原様。御社のご提示条件は非常に魅力的で、弊社としても前向きに検討しております。ただ、協業の可否につきましては社内での協議が必要です...

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