第41章

「司」

 葉山美晴は西原司の隣に腰を下ろすと、自分からその腕にそっと絡みついた。

 司がやや早いペースで酒をあおっているのを見て、葉山美晴は気遣わしげに尋ねる。

「どうかしたの?」

 西原司は首を横に振り、低い声で言った。

「別に」

 司はおしゃべりな女を好まない。葉山美晴はそれを分かっているから、それ以上は何も言わず、素直に彼の傍らに座っていた。

 西原司の表情はいつも通り冷ややかだったが、今日は明らかに機嫌が悪い。まとわりつく空気まで重たかった。

 2階のプライベートルームは位置が高い。床まで届くガラス窓越しに、1階の客席がはっきり見渡せる。

 西原司は伏せた目で、空に...

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