第62章

病院のSVIP個室。病床の葉山美晴は、ぬくもりに包まれていた。

刃物傷は左胸の脇。命に別状はないものの、動くたびに痛みが走り、身動きが取りづらい。

西原司は湯気の立つお粥の椀を手に、彼女の口元へそっと運ぶ。ひとさじ、またひとさじ。丁寧に、やさしく。

男の横顔は真剣で、眉間の力はほどけている。眼差しの奥に、静かな情が滲んでいた。

病室には葉山家の面々も揃っていた。司が美晴を気遣う様子に、誰もがほっとしたように微笑む。

葉山憲之介だけは年が若いぶん、胸の内を隠しきれない。得意げに身を乗り出し、司へ声をかけた。

「お義兄さん、離婚の話、もう切り出したの?」

司の手が、ふっと止まる。返...

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