第75章

西原司は、たしかに残業の予定だった。

夕食を終えると、西原司は運転手に命じて、葉山美晴を葉山家まで送らせた。

美晴は「残って一緒にいる」と言ったが、あっさり断られる。

時差の関係で、今夜は取引先との国際会議が入っていたのだ。

会議を終え、オフィスへ戻ったところで、法務部の平岡咲人がコンコンとドアを叩いた。

平岡は西原司のもとへ歩み寄り、確認済みの書類を差し出す。

「西原様、離婚協議書の条項はすべて確認済みです。あとはご署名いただければ、手続きを進められます」

西原司は万年筆を握る手に、わずかに力を込めた。

数秒、固まったまま――そして、ゆっくりと協議書を受け取る。

平岡は脇...

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