第78章

周防凛と西原司の視線が、ほんの一瞬だけ交わって――すぐに逸れた。

西原司が気遣うように声をかける。

「まだ寝てないのか」

周防凛は小さく「うん」とだけ返し、また俯いて本に目を落とす。

西原司はそれ以上は聞かず、クローゼットで着替えを取り、浴室へ入っていった。

周防凛の胸の奥には、言葉にならないものが渦巻いていた。葉山美晴は、本当に妊娠しているのか――そう問いただしたい。

けれど、込み上げる苦さが喉元を塞ぎ、じわじわと心臓を削がれるような痛みが彼女を蝕む。

もうすぐ離婚する。西原司のことに口を挟む資格なんて、最初からない。

周防凛はその苦味を無理やり飲み込み、本を閉じてナイトテ...

ログインして続きを読む