第84章

周防凛が胸の奥で失望を噛みしめているのとは対照的に、西原景冶はやけに浮き立っていた。

景冶はしばらく、美晴おばさんに会えていない。母親と祖父が家にいるあいだは、美晴おばさんが遊びに来ることもできなかったのだ。

なにより、美晴おばさんは玩具をたくさん買ってくれる。景冶はそれを首を長くして待っていた。だからこそ、祖父と母親が引っ越すらしい――そんな話を聞いた瞬間、胸が弾んだ。

母親がいないと寂しくなることもある。けれど一緒にいる時間が長くなると、今度は「うるさい」と感じてしまう。何でもかんでも口を出してくるのが、景冶には窮屈だった。

周防凛は景冶を手放したくなくて、子ども部屋へ向かった。...

ログインして続きを読む