第89章

車がマンションのエントランス前で停まる。周防凛は西原司を連れ帰り、今夜こそ――法廷さながらに、腹を割って話し合うつもりだった。

この交渉のために、周防凛は深夜にもかかわらず佐藤弁護士に連絡を入れ、最新版の協議書を送ってもらっている。

佐藤弁護士はLINEでも、交渉の流れや言い回しまで細かく指示してきた。

周防凛はそれを全部頭に叩き込み、胸を張って西原司と対峙する――はずだった。

ところが。

西原司は玄関を上がった途端、酔いが一気に回ったのか、ソファへどさりと倒れ込み、そのまま眠ってしまった。

周防凛は、酔い潰れた彼の横顔を見下ろし、短い沈黙に落ちる。

意識は完全に飛んでいないら...

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