第91章

葉山美晴から着信が入り、西原司はバルコニーへ出て電話に出た。

周防凛はその背中を見つめながら、胸の奥に、理由もない酸っぱさがじわりと滲む。

肉体は噛み合っている。けれど、心は同じ速度で歩けない。

ほどなくして西原司が通話を切り、足早に戻ってきた。

眉間に深い皺。顔色も重い。

「景冶が……いない」

周防凛は一瞬で血の気が引いた。

「どういうこと?」

肩が小刻みに震えるのを見て、西原司は彼女の肩をぽん、と叩き、低い声で宥める。

「習い事の先生から連絡があった。景冶が勝手に外へ出て、そのまま行方が分からないって」

周防凛は慌ててスマホを掴み、景冶のキッズウォッチへ発信する。――...

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