第5章

 粗悪な消毒液のツンとした匂いをもってしても、むせ返るような腐臭を覆い隠すことは到底できなかった。

 闇クリニック『ラスト・ホープ』の薄暗い地下廊下。私の高貴なる家族たちは、床に溜まった汚水を踏み避けながら、一様に露骨な嫌悪感を顔に貼り付けていた。

「あのアマ、本当にイカれてるわ! こんなスラム街にわざわざ足を運ぶなんて!」

 母である朋美はダイヤをあしらったハンカチで口元を覆い、甲高いピンヒールの音を苛立たしげに床のタイルに響かせている。

「中に転がってる死体なんて、絶対にあの娘のわけがないわ。どうせ私たちを嫌がらせるために、金に飽かせて用意した悪趣味な小道具に決まってる!」

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