第8章

いよいよ私は、映画の撮影現場へと足を踏み入れた。

田中恵からは、一度ならずこう感慨深げに言われた。

「あんたは本当に運がいいわ。初仕事で倉持修みたいな名監督に出会えるなんて」

最初のひと月半は、役作りに専念した。倉持修自らが主演を務め、毎日細やかに演技指導をしてくれた。

そして、残りのひと月半は集中的な撮影に費やされ、クランクアップを迎えた。

クランクアップの日は、ちょうど私の誕生日だった。

最後のシーンを撮り終え、疲れきった体を引きずって仮の宿舎に戻った。シャワーを浴びようとしたその時、ドアがノックされた。

「森川さん、お客さんですよ」

演出の声がドアの外から...

ログインして続きを読む