第10話

神谷怜を抱え、私は足早にその場を離れた。背後から黒瀬律の叫び声が追いすがってくる。

「ママ、これママが自分で言ったんだよね。これからは美玲おばさんが僕のママだよ」

「……うん」

神谷怜をきつく抱きしめ、律から視線を引き剝がす。振り返りもせず、そのまま歩いた。

「悪いママ! 大っ嫌い!」

泣き声まじりの声。けれど私は、最後まで後ろを見なかった。

気づけば、神谷怜と私はバス停の近くまで来ていた。

「神谷怜、今日はごめんね。私、車がないから……バス、ぎゅうぎゅうかも」

地面に降ろし、そっと頬をつまむ。

「白石紗月おばさん。バスに乗らなくていいよ。僕たち、専属の運転手がいるから」

...

ログインして続きを読む