第20話

「……あ、分かった」

黒瀬蓮に叱られたというのに、黒瀬律は拗ねるどころか、どこか嬉しそうに口元を吊り上げた。

おかしい。こんなはずじゃない。あの親子が、白石紗月にここまで気を取られるなんて。

私は黒瀬蓮を見て、それから黒瀬律を見た。無意識に、爪で掌を掻いた。皮膚が破れるほど掻いてようやく、胸の奥に這う恐怖を押し殺し、黒瀬蓮に向けてぎこちない笑顔を作る。

「黒瀬蓮、もう遅いわ。私は部屋に戻って休むね」

「……ああ」

黒瀬蓮は私の言葉をまともに聞いていなかった。適当に頷くと、そのまま踵を返して自室へ向かう。

黒瀬律も私をちらりと見ただけで、ぱたぱたと駆け去った。

「白石紗月……!...

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