第48話

「……分かりました」

黒瀬グループ本社最上階。重厚な扉に囲まれた役員フロアの一角――社長室。

受話器の向こうから流れてきたのは、疲れきった声と、滲むような悔しさだった。胸の奥が、じわりと苦くなる。

けれど、これは黒瀬様に伝えるべきだ。

口では彼女の頼みを受け入れた。だが通話を終えた瞬間、私は覚悟を決め、社長室へと足を向けた。

「少し……お話ししたいことがございます」

数分後、扉を開けて室内へ入る。黒瀬様のデスクのそばまで進み、控えめに咳払いをした。

「本日、奥様がショッピングモールで買い物をされている最中に、高木直哉と鉢合わせたそうで、その――」

「彼女が君に泣きついたのか?...

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