第54話

「白石紗月。榊原先生が急に祖父の治療を断ったのは……やはりお前の仕業だな」

黒瀬蓮がばっと目を上げる。瞳の奥は、冬の雪片よりも冷たかった。

「黒瀬グループがここまで来られたのは、祖父の助けがあったからだ。最近は株価も不安定だ。このタイミングで祖父の訃報でも流れたら――黒瀬は致命傷を負う」

その剣呑な気配にも、私は怯まない。淡く笑い、真正面から視線を受け止めて、一語ずつ落とした。

「黒瀬様。黒瀬グループを、あなたの代で潰したくはないですよね?」

黒瀬蓮と黒瀬律は、いつだって私に選択を迫ってきた。

なら今日は、私が真似をする番だ。

黒瀬蓮に“選べない問題”を突きつけてやる。

美玲...

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