第56話

(黒瀬律の視点)

「狂ってる。白石紗月は絶対に狂ってる」

黒瀬綾子は手近のテーブルをバンッと叩いた。顔色はどす黒く沈み、目つきだけが鋭く光る。

「律。あんな真似をされて、あんたは紗月を叱らなかったの? 言ってやりなさい。謝らないなら、もう要らないって」

「ばあば、違うよ。僕がママを要らないんじゃない。ママが……僕とパパを要らないって言ったんだ」

僕は黒瀬綾子の腕にしがみつき、泣きそうな声を作って訴えた。

「僕が『あの子のこと、もう放っておいてよ』って言ったら、ママ、僕とパパのこと怒鳴った。『律の世話をしても、何も返ってこない。でも神谷怜の世話をすれば、お金も入るし、愛されるし尊敬...

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