第63章

黒瀬蓮は冷えきった顔で私を見据えた。必死に押し殺していた苛立ちが、また胸の底からせり上がってくるのが分かる。握りしめた拳はさらに固く、白く浮いた指の関節が痛々しい。

「白石紗月。俺を責め立てるのも、結局は俺の気を引くための手段か?」

「もしそうなら――君は成功した」

「もう一歩だけ譲ってやる。今すぐ仕事を辞めて家に戻れ。俺と黒瀬律の世話を続けるなら、両親には俺が言って、今後いっさい君に手を出させない」

「ただし、美玲のことは受け入れろ」

「俺が美玲に優しくするのは、俺たちが美玲に申し訳ないことをしたからだ。それに……美玲は、あと一年しかない」

「癌の人間にまで嫉妬し続けるなんて、...

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