第66章

佐藤先生は唇をぺろりと舐め、目尻を赤くして、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

あたふたする彼女を見ていると、どれほど板挟みで苦しいかが手に取るように分かる。神谷怜と黒瀬律の保護者に連絡する前、まさかこの二人の親が、どちらも「相手にしたくない」種類だなんて、夢にも思っていなかったのだろう。最初から神谷怜たちの素性がただ者じゃないと分かっていれば、喧嘩をここまで大ごとにしなかったはずだ。けれど今さら遅い。黒瀬家か神谷家か――少なくとも片方は、もう敵に回してしまっている。

「黒瀬律くんのお父さま……神谷怜くんの訴えについて、何かお話しいただけますか」

長い逡巡の末、佐藤先生はようやく腹を括...

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