第72章

瞬く間に、美玲はまたケーキをひとさじ口へ運んだ。

「美玲……」

黒瀬蓮の目がすっと沈む。反射的に止めようとしたのに、黒瀬律が食べても何の異変もないのを見て、結局、言葉を飲み込んだ。

「なに? 黒瀬蓮、さっき何か言いかけたよね?」

美玲は首をかしげ、視線を彼へ向ける。

「……いや、別に」

黒瀬蓮は目を伏せ、かすかに首を振った。

「あ、分かった。ケーキの中に、律が食べちゃいけないものが入ってるんじゃないかって心配してるんでしょ?」

美玲はくるりと目を動かすと、わざともう一切れを黒瀬律の手に持たせ、くすっと笑った。

「安心して。律にお菓子を取る時は、いつもこっそり材料を見てるの。...

ログインして続きを読む