第74章

「何する気よ!」

美玲の甲高い叫びが、鼓膜を裂いた。

はっと顔を上げる。神谷怜が黒瀬律のそばまで駆け寄り、私がバッグから取り出した薬剤入りの注射器を、ためらいなく黒瀬律の体へ押し込んでいた。

美玲の顔色がさっと変わる。次の瞬間、彼女は神谷怜に飛びかかり、容赦なく左右の頬を二度、叩いた。

「神谷怜!」

どこから湧いたのか、自分でも分からない力が出た。私を押さえつけていた連中を振りほどき、膝の激痛にぐらりとよろけながらも、構わず神谷怜のもとへ駆ける。

そして、きつく抱きしめた。

「大丈夫? ねえ、あなた……正気なの? なんで出てきたのよ!」

「白石紗月、大丈夫だよ」

神谷怜は赤...

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