第84章

セレーネジュエリーのオフィスでデザイン画を引いていた、そのときだった。

スマホが不意に鳴る。

画面に出たのは佐藤先生の名前。胸の奥がひゅっと沈み、指が頭より先に通話ボタンを押していた。

「白石紗月さん、お仕事中にすみません。でも……神谷怜くんと黒瀬律くんが、また衝突してしまって」

佐藤先生の声は切迫しているのに、どこか疲れ切っている。

「今回は少し深刻で……黒瀬律くんが神谷怜くんを突き飛ばして、怜くんの手首が擦りむけました。来ていただけますか、幼稚園まで」

「すぐ行きます」

保存する暇すらない。私はバッグをつかむと、椅子を蹴る勢いでオフィスを飛び出した。

車はない。道路脇に立...

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